2010年03月11日発行 第0589号 特別 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■ 日本国の研究 ■■■ 不安との訣別/再生のカルテ ■■■ 編集長 猪瀬直樹 ********************************************************************** http://www.inose.gr.jp/mailmaga.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この2、3年、名刺に必ずメールアドレスが記載されるようになりました。 そこでこのメールマガジン「日本国の研究」に気付いていなかった方にあらた めてお送りさせていただくことにしました。急にメールマガジンが届いてびっ くりされているかもしれませんが、そういう理由です。 猪瀬直樹 ====================================================================== ■■猪瀬直樹がブログをはじめました■■ 都庁でどんな仕事をし、石原知事とどんな会話を交わし、きょうのニュース にどう反応し、何を考えたか。ビジネスに役立つヒントがここにあるかも。ぜ ひチェックしてみてください。 猪瀬直樹Blog http://www.inosenaoki.com/ ====================================================================== ◆◇◆ 猪瀬直樹最新刊 ◆◇◆ ◆◇『ジミーの誕生日―アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』◇◆ ◆◇◆ (文藝春秋)税込1500円 ◆◇◆ http://www.amazon.co.jp/dp/4163721304 * 「猪瀬は、天皇の誕生日に、A級戦犯たちが起訴されたのを“あなた方(A級 戦犯)は、(天皇の)かわりに罰を受ける”のだという、マッカーサーのメッ セージであると読み解いている」(田原総一朗・ジャーナリスト) 「いわゆるA級戦犯7人は、『皇太子明仁の誕生日』に処刑された。そこから 著者は、戦後史のパズルにせまっていく。筋立ても場面展開もお見事。プロの 技に脱帽した」(井上章一・国際日本文化研究センター教授) 「推理小説ばりの息もつかせぬ展開に引きずられて、一気に読み終わったとた ん、旧約聖書の『創世記』の物語を思い出した」(仲晃・桜美林大学名誉教授) * http://www.amazon.co.jp/dp/4163721304 * 民主党政権が4月に行う「事業仕分け第二弾」で、独立行政法人や公益法人 のムダに切り込む、と報じられていますが、3月10日付けの読売新聞は「仕分 け対象額 4兆円満たず/財源ねん出は期待薄」と見出しを打っています。4 兆円? ヘンだと思いませんか。 民主党はマニフェストで以下のように書いていた。 「天下りの在籍する独立行政法人、特殊法人、公益法人などへの支出〔1年に 約12兆円〕<略>を見直して、国の政策コスト、調達コストを削減する」 独立行政法人や公益法人に支払うお金を見直すと、「12兆円」がまるまる浮 くような書き方をして、財源はいくらでもある、と言っていた。最近になって 慌てて、枝野幸男行政刷新担当大臣が「確保できる財源の金額は大きくない」 と懸命に予防線を張っている。 あたり前なのです。分母が4兆円しかないのだから。12兆円という数字は、 何の根拠もないまやかしの数字だった。 そもそも小泉内閣発足当時、163あった特殊法人(最近は独立行政法人と 呼ぶ)に流れ込んでいた補助金は5兆3000億円(01年度)だった。うち3000億 円は旧道路公団への利子補給金という名目で投入されていた。僕は小泉純一郎 首相に5兆3000億円のうち1兆円以上を削減しましょう、と提案した。年々削 減が進み、3兆2000億円(10年度予算)まで減った。 一方、国が所管する公益法人(財団法人・社団法人)は当時7000法人、6000 億円の補助金が流れていた。小泉内閣で公益法人の情報公開が進んで透明化さ れ、07年度は3300億円にまで削減され、2010年度予算案では2000億円、独立行 政法人から公益法人に流れる補助金などを含めても8000億円となった。 やっぱり、特殊法人への3兆2000億円と公益法人への8000億円を合わせても 4兆円にしかならないのだ。民主党が喧伝していた「12兆円」というのはウソ だった。それをメディアに幾度も説明したのに、勉強しない。困ったものだ。 小泉内閣発足してまもなく、『日本国の研究』以来指摘してきた特殊法人・ 公益法人への補助金の構造をもういちど整理して『猪瀬直樹著作集1巻 構造 改革とはなにか』に収録してある。 きょうの朝日新聞朝刊1面トップの「空港20法人 蓄財290億円」で名前 が挙がっている財団法人空港環境整備協会も、空港の駐車場ビジネスを独占し ている実態を当時から繰り返し指摘してきたものだ。 事業仕分けで公益法人を対象にするならば、これまでの蓄積を生かしてほし い。今回配信するメルマガは、2001年7月に小泉首相に提言した当時の「ニュ ースの考古学」(2回分)です。ぜひ民主党の事業仕分け人の方々にも読み直 していただきたい。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 民主党の「12兆円が浮く」はいったい何だったのか ■税金6000億円を虫喰う公益法人 日本国の税収は50兆円余、うち特殊法人へ5兆3000億円が流れていく。 小泉首相は訪米の前に、5兆3000億円のうち少なくともその2割、1兆円を 来年度予算から削り、浮いた1兆円を別の政策のために振り向けろ、と塩川正 十郎財務大臣及び石原伸晃行革担当大臣へ指示した。平成14年(02年)度予算 の概算要求が8月末には出揃うが、財務省主計局と内閣官房行革推進事務局は、 特殊法人が行っている不必要な事業を見直し、ないしは廃止することで削減す る1兆円を割り出す方向で検討している。 もうひとつ、社団・財団などの公益法人のために6000億円(平成11年度決算 ベ−ス)の税金が使われているが、そのうちどの程度カットできるか、早急に 削減目標を決める必要があるだろう。 * 行政委託型公益法人というものが1000法人ほどある。日本国は外国と較べる とそれほど公務員が多いわけではない、と統計数字を出して主張する者がいる。 だがこうした行政委託型公益法人はいわば"隠れ公務員"であり、表向きの数字 をいじくり回して弁明しても意味がない。 行政委託型公益法人は、行政の一部を委託されたというタテマエで補助金及 び委託金(どちらも税金)を得ているのだから、その使途については情報公開 の対象とされなければならない。 どんな法人にどのぐらい補助金が配られているか、耳慣れないと思うけれど ちょっと挙げてみよう(以下は平成10年度決算ベース)。 (財)防衛施設周辺整備協会(防衛庁所管)・48億7000万円、(財)交流協会 (外務省)・17億8000万円、(財)内外学生センター・17億2000万円、(財) 私学研修福祉会・19億2000万円、(財)日本国際教育協会・405億9000万円 (以上、旧文部省)、(財)ヒューマンサイエンス振興財団・29億3000万円、 (財)放射線影響研究所・26億8000万円、(財)産業廃棄物処理事業振興財団・ 13億3000万円(以上、旧厚生省)、(財)産業雇用安定センター・24億4000万 円、(財)労災保険情報センター・134億円、(財)産業医学振興財団・1 19億5000万円(以上、旧労働省)、(財)建設業振興基金・25億円(旧建設 省)、(財)空港環境整備協会・15億2000万円(旧運輸省)、(財)農林水産 長期金融協会・78億円、(社)全国農地保有合理化協会・26億9000万円、(財) 全国土地改良資金協会・170億円、(社)配合飼料供給安定機構・101億 2000万円、(財)食品流通構造改善促進機構・32億9000万円、(社)全国米麦 改良協会・257億5000万円、(社)大日本水産会・206億円、(財)海外 漁業協力財団・22億6000万円、(財)魚価安定基金・17億3000万円、(社)国 際農業交流・食糧支援基金・65億円(以上、農水省)、(財)海外貿易開発協 会・30億6000万円、(財)海外技術者研修協会・88億6000万円、(社)全国石 油協会・31億7000万円、(財)石油産業活性化センター・151億5000万円、 (財)新エネルギー財団・84億5000万円、(財)省エネルギーセンター・27億 7000万円、(財)電源地域振興センター・53億9000万円、(財)天然ガス導入 促進センター・19億8000万円、(社)日本ガス協会・16億7000万円、(財)全 国中小企業情報化促進センター・150億円(以上、旧通産省)、(社)道路 トンネル情報通信基盤整備協会・10億7000万円(旧郵政省) ひとつひとつ突っ込んでみたい名称が多い。このコラムで触れたが(3月8 日号)、財団法人建設業振興基金はさまざまな資格を販売した結果、 その資 産総額は300億円に達する。こうした事実をつかむにあたって財務諸表のコ ピーを請求したら、「情報公開の義務は閲覧のみである」と拒否された。 「公益法人の設立許可及び指導監督基準(平成8年9月20日閣議決定)」の「 情報公開」の項に「業務及び財務等に関する資料を主たる事務所に備えて置き、 原則として、一般の閲覧に供すること」と記されているからである。この閣議 決定は、まったく情報公開をしてこなかった社団・財団法人をチェックするに は画期的なものになるはずだった。ところが建設業振興基金の総務課長は、「 閲覧」としか書いてないことをたてに、字義どおり「見るだけであってコピー は罷りならぬ」とわけのわからない主張を繰り返したのだ。 ■一元管理のデ−タベ−スを これらの事例にみられるように、公益法人の急所は情報公開にある。補助金 や委託金をもらう正当な理由、あるいは適正なコストについて、第三者機関な いしは国民がチェックできるようにしたい。すでにインターネット上で情報開 示している公益法人もあるが、各法人ごとに独自でやっているので公開基準も まちまちなのだ。建設業振興基金などは事務所の住所や組織図、事業案内しか 載せていない。 僕が提案したいのは、すべての公益法人の情報を一元管理するデータベース の構築である。企業会計原則にのっとった財務諸表、附属明細書、課税対象額、 納税額、内部留保額(剰余金)を明示すること。各手数料、代金等の積算根拠、 再委託の場合は委託契約書及び委託金額の明細も必要である。固定資産につい ては取得原価、取得年、時価評価額、減価償却の実施情況など、また各事業収 入ごとに課税・非課税の区分とその根拠の説明を付与する。独自に出資してい る関連法人については出資比率を示し、決算内容も公開すること。さらに関連 法人を含めての役員名簿(経歴と組織名、前職)及び報酬額と退職金額の規定 も明らかにする。 以上を行革推進事務局と所管官庁の監督責任で各法人にデータ入力・更新義 務を負わせたらよい。これができれば国民はインターネット上に公開された公 益法人検索データベースにいつでもアクセスし、活動内容を知ることができる。 社団・財団法人は2万6000もあるから全体の見取り図がつくれない、そこがい ちばんの問題だったわけで、こうすればKSD事件のようなケースも早期に発 見できただろう。 (「週刊文春」01年7月19日号掲載) * ■「公益法人」の「偽装」をどう見破るか 前回は、社団・財団等の公益法人の情報公開について提案した。インターネ ット上で企業会計原則にのっとった財務諸表などを載せ、実態を正しく把握す ること、これこそが構造改革にあたるのだ。ルールをひとつひとつわかりやす くつくっていく作業といえよう。 * 税金の行き先について国民はどのくらい知っているだろうか。『日本国の研 究』の際に、公益法人に投入されている税金は3900億円と記した。公益法人を 担当している旧総理府(内閣総理大臣官房管理室の公益法人行政推進室)でつ かんでいる数字を使った。94年度(平成6年度)決算ベースの数字である。内 閣官房行革推進事務局の数字では、99年度(平成11年度)決算ベースで6000億 円にまで膨らんでいる。5年間で2100億円も増加した。 小泉首相は、特殊法人に投入されている5兆3000億円のうち平成14年度(02 年度)予算から約2割、1兆円を削減するよう塩川財務大臣と石原行革担当大 臣に指示したが、公益法人にも同様に明確な数値目標の設定が必要だろう。約 4000億円が6000億円になったのだから、少なくとも5年前の水準に下げるとし たら3割削減となる。 強調しておきたいのは、公益法人に流入している補助金や委託金(いずれも 税金)について国会議員はチェックしてこなかったし、できなかった点だ。こ れらの一覧表が予算ベースで存在しないからである。なぜなら予算は各省庁に 振り分けられるが、ある省庁で××研究費とか△△調査費などの名目で計上さ れた場合、それはその研究費や調査費の総額でしかない。前年度の慣行があっ ても、タテマエ上は予算なので、年度内に具体化されていくものと解釈される。 民間のシンクタンクでも社団・財団でも、と配分先は幾つにも分かれる。結果 として、社団・財団に幾ら回ったのか、決算ベースでしか明らかにされない。 ならば前年度実績に対して削減の数値目標を設定するほかはない。 このコラムで以前に電気技術者試験センターと電気工事技術講習センターと いう瓜二つの財団法人の存在を示した。電気工事関係者は試験や講習を受けな いと資格がとれず、したがって仕事をもらえない。強制的に試験や講習を販売 している2つの財団法人は、どちらも職員がわずか20人前後、にもかかわらず 内部留保が30億円前後、と大儲けであった。 ここで新たな事情を追加して説明するが、職員数が少ないのは実施部隊では ないからだ。試験センターだけで年間23万人も受験させられている。2つのセ ンターとも別の公益法人に丸投げしている。どこに丸投げされているか調べた。 社団法人日本電気協会で、有楽町駅近くの電気ビル、19階と20階に日本外国特 派員協会が入っているツインタワーの建物のなかにある。 日本電気協会に収支決算書を見せてもらった。平成11年度決算の「試験講習 業務収入」は17億5000万円だ。ついでにどんな収入項目があるのか眺めていて、 何だこれ? と思ったのが「委員会収入」2億5000万円だった。 「委員会収入」に政府からの委託金が入っている。しかし、この名目ではそれ を読み取るのは不可能である。インターネット上で公益法人の情報を一元管理 する場合、項目がまちまちであってはならない。「委員会収入」など意味不明 の項目はやめさせ、ふつうの会社と共通の定義にしたらよい。 日本電気協会の貸借対照表「剰余金」の項目をみると38億9000万円、なかな か貯めているじゃないか、と思う。さにあらず、「剰余金」のひとつ上の欄の 「基金」という項目、93億6000万円である。基金とは? 「剰余金」と別項目 にしてあるから一見すると剰余金ではないと錯覚させられる。そこが狙いなの だろう。結局、133億円もの内部留保があったわけだが、専務理事にその点 を問うと、38億9000万円ならば事業規模に比して剰余金が多すぎるとは思えな い、と答えた。かえって「基金」の意味がわかった。 ■電気協会のカラクリ 試験や講習は東京のみで行うわけではない。支社がそれらを実施しているの だが、支社と呼ばずに北海道電気協会、東北電気協会、関東電気協会、中部電 気協会、北陸電気協会、関西電気協会、中国電気協会、四国電気協会、九州電 気協会などの名称になっている。電気ビルに関東電気協会があり、名刺をもら うと日本電気協会の支社ではなく「関東電気協会」とのみ記され、あたかも別 法人のごとくであった。 法人登記こそしてないが、実態は別法人なのだ。それぞれの地方電気協会は 独自に株主総会にあたる「通常総会」を開催し「決算報告書」を承認している からだ。天下りを含めた役員も地方協会ごとにくっついている。試験センター と日本電気協会との間の「試験事務委託契約書」第五条に「再委託の禁止」の 規定がある。 こう考えるとわかりやすい。各地域電気協会はそもそも独立した存在だが、 委託金の関係から法人登記は日本電気協会として一本化しておいたほうが都合 がよい。さらに「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」(平成8年 9月閣議決定)の1.の(5)「委託等を行う官庁の出身者と委託等された検 査等に関わる業界の関係者の合計が、理事現在数の2分の1を上回らないこと」 という規定に対しては、日本電気協会のみが守れば済むのであり、地方電気協 会は独立した存在であっても支社を装っていれば無視できる。 はっきり言って悪智恵である。だから行革推進事務局や行革断行評議会は気 を抜けない。 (「週刊文春」01年7月26日号掲載) * メールマガジンの感想をお待ちしております。 「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp 猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■掲載情報 ・先日、猪瀬直樹事務所に太陽光パネルが設置されました。3月10日(水)発 売「文藝春秋」4月号にパネル設置の経過と共に補助金のしくみ、余剰電力 の買取制度について説明した論考「わが城を240万円でソーラー化したら」 が掲載されました。 ・3月12日東京新聞夕刊1面、コラム欄「放射線」。(毎週金曜日掲載) ・日経BPネットの好評連載「猪瀬直樹の『眼からウロコ』」最新号がアップ されました。「動きが鈍い「1丁目1番地」の地域主権改革 規制緩和と都独 自の工夫で約4400人の待機児童が解消できる」はこちら。 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100308/214509/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バックナンバーはこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga.html ご意見・ご感想はメールでどうぞ。 info@inose.gr.jp 配信解除の方はこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga.html まぐまぐの配信解除は http://www.mag2.com/m/0000064584.html 猪瀬直樹の公式ホームページはこちら。 http://www.inose.gr.jp/ ○発行 猪瀬直樹事務所 ○編集 猪瀬直樹 ○Copyright (C) 猪瀬直樹事務所 2001-2010 ○リンクはご自由におはりください。ただしこのページは一定期間を過ぎると 削除されることをあらかじめご了解ください。記事、発言等の転載について は事務局までご連絡くださいますよう、お願いします。