2012年01月19日発行 第0681号 特別
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 ■■■    日本国の研究           
 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
 ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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                猪瀬直樹氏は、
      子爵夫人の日記に残された謎を解き明かしながら、
           アメリカが日本に仕掛けた
     対日占領政策の大きな構図を浮かび上がらせていく。
    それによって、現代の日本と占領期の日本との間に漂う
        霧のような薄闇を払っていくのである。

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 1月16日月曜日、猪瀬直樹は福島に向かいました。

 被災地で活動する東京都職員を激励するためです。

 大波地区では、畑の土壌をショベルカーや手作業で3センチ剥ぎ取って行う
除染の現場を、相馬港では埠頭の修復作業を。実際に彼らの奮闘を目にし、翌
17日、猪瀬はこのようにツイートしました。

「福島に行ってよかった。除染には時間とコストがかかるが絶望ではなく突破
できる展望が少し見えた。東京都は独自の電力をつくるため最善の努力を尽く
すが、日本人が福島の人々を救うという課題は白熱教室のサンデル教授的に言
えば失われた『正義』の復権なのだと思う」

 視察の様子はブログでも写真入りで報告しています。
 http://www.inosenaoki.com/

                *


 税と社会保障一体改革担当大臣として岡田克也副総理を据えた野田改造内閣
が発足しました。「消費増税の正念場」との野田首相の言葉が空々しいのは、
支出を減らす改革が口先ばかりだからです。

 たとえば年間36兆円に上る医療費にも無駄はあります。今週のメールマガジ
ンでは、「まもなく運用が始まる電子カルテを有効に活用すれば、無駄を発見
できるはず」という現役の霞が関官僚の提言をお届けします。
 

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「実は今の一体改革よりも、もっと重要な改革」
 〜医療費の適正化が可能になるか、形だけか〜

                    会計検査院官房審議官 飯塚正史

「医療費明細を電子照合 厚労省 無駄な診療を洗い出し」昨年12月25日、日
本経済新聞の一面トップにこういう見出しがあった。これは、どういうことか。
実は、高齢化社会の中にあって、この電子照合という行為は、無駄な医療費を
抑制する大きな効果をもつ。

 医療は命や健康に関するものだ。抑制すればいいというものではない。

 しかし、「無駄な医療費」というのがあるのなら、それは抑制すべきだと誰
しも思う。今や国民医療費は年間36兆円、我が国の税収と同じくらいの額にな
っている。

 無駄な医療費というのはどういうものか。

 わかりやすい例は、皆さんが調剤薬局に提出する院外処方箋の内容と、調剤
薬局が国や市町村に請求する請求書とが違っている場合だ。実際の薬は2000円
だったのに、調剤薬局の国への請求が5000円だったら、3000円の水増し請求だ。

 こんなものを支払う必要はない。

 しかし、今までこういうチェックはできなかった。なぜかと言えば、請求書
という紙でのやりとりだったので、病院からの請求書と調剤薬局からの請求書
とがどちらも膨大過ぎて、人による突き合わせはできなかったからだ。

 病院から国や市町村への請求書は毎月、患者さんごとに出される。
 
 例えば、<都立広尾病院、田中太郎さん、12月分>というくくりで一枚の請
求書となり、その中にその月の診療の回数とか、血液検査の値段とか、処方箋
の値段とかが書かれている。

 そして、一人一枚にしても広尾病院の月の外来患者は21万人だから、請求書
も21万枚ということになる。院外処方箋の発行率は87パーセントだから18万枚。
この21万枚と18万枚をどうやって突き合わせするか。機械を使わない限りそれ
は無理だった。

 しかし、去年の4月までに、医療機関の請求書(レセプト)も調剤薬局の処
方箋も紙から電子化される計画だった(調剤薬局は、大幅に遅れている)。

 仮に実現すれば、この21万枚と18万枚の突合も、そのためのソフトを作れば
できるようになるのだ。

 この記事によれば、今の水増し以外に、薬の量や投与日数が制限を超えてい
ないか、併用が禁じられている複数の薬の投与などを調べるようだ。

 特にご老人の場合は、複数の医療機関を掛け持ちするので、薬の処方につい
ては注意が必要だ。同じ薬がでていて、両方飲めば用量を越えてしまう危険が
あるし、違う薬であっても、拮抗作用といって、他方の薬の効き目を押さえる
ことになったり、有害な副作用をおこしたりするから、複数の処方箋を突き合
わせすることにはとても意味がある。

 病院の請求書のチェックについては、縦覧点検をすると書かれている。一人
の患者さんについて、同じ病院での6カ月分の請求書を集めて、3月に一度し
か認められていない診療が毎月行われていないかを見る、と書かれている。い
ずれも、電子的にしかできない話であるし、そういう事態があれば、過剰な診
療といえるだろう。

 これにより、数百億円から一千億円超の無駄遣いが見つかる可能性があると
いう。今年の3月分から実施予定。ここまでが記事である。

 しかし、この厚労省が発表した電子照合の考え方には大きな穴があいている。
第一に、調剤薬局の水増しである。もしも、病院が出した院外処方箋とは別に
水増し請求書を作ったとしたら、それは、詐欺罪なのである。見つかれば、そ
の薬局は、保険薬局の指定を取り消され、間違いなく倒産する。そのようなこ
とは、たとえやっていたとしても、電子化された段階でやらなくなるだろう。
調剤薬局の電子化が非常に遅れているのも、関係なくはないと思う。つまり、
電子化された時点で止めるだろうから、チェックの結果、見つかるものは、ほ
とんどないと思われる。

 第二に、薬の用量のチェック、拮抗作用、副作用のチェックは、特にご老人
にとっては大事なことだが、チェックしたあと、誰がどうやって事後処理をす
るのだろう。小さい町では、町の保健婦がやっているが、東京のような場合は、
そのデータの処理が行政の中で可能かどうか、詰めて考える必要がある。サラ
リーマンが属する協会けんぽ分などは、協会けんぽに手足になる組織はない。
どうするのだろう。

 第三に、一番大事な医療機関の方の請求書のチェックに中身がないことだ。
3月に一度しか認められていない診療などというのは、あまりない。

 実は、医療機関の請求書のチェックで大事なことは、患者ごとに見てもわか
らないが、医療機関ごとに見るととんでもないという請求を、電子化された情
報の中から見つけてゆくことだろう。

 例えばリハビリテーション料には、専従の理学療法士がいて、一日の上限が
決められている。ところが、病院全体でみると、理学療法士が10人いてもでき
ない量の請求があったりする。これは、全部査定すべきだが、今は普通に支払
われている。

 あるいは血液検査では、入院患者全員が同じ種類の血液検査を大量にやって
いる病院もある。内科も外科も、さらには精神科すらも、同じ血液検査をする
というのは、もはや病気の治療のための検査とはいえない。昨年、会計検査院
の調査官が出した本(『私が見た不正経理』高本秀雄 全国会計職員協会)に
はそういうことが沢山書いてある。

 東京23区は今年度、国保の保険料を大幅に上げた。来年度も上げることにな
る。

 他方、保険料の滞納者で保険証を取られた人は東京都内だけで16万世帯。な
んと品川区の世帯数と同じだ。全国では160万世帯にものぼる。

 社会保障と税の一体改革と盛んに言う。しかし、その中身は、消費税を上げ
ること以外に何があるのだろう。

 今もっとも、考えるべきことは、1000兆円になろうとする国債の利払いを税
金から払うとして、社会保障にあてる額は、税金の残りと新たな国債だ。しか
し、この新たな国債は、利払い額の上限を税収にすることで、制限されるのだ。
この誰が考えてもわかる道理が、今の一体改革案のどこにもない。毎年40兆円
もの国債の発行が未来永劫できるとでも思っているのだろうか。

 国民年金の年金権は60歳まで25年間、保険料を収め続けることで発生する。
しかし、若い頃貧乏で未納だった40歳の人が、なんとか払えるようになったか
らと言って、収めようと思っても、60歳まであと20年しかない。

 彼が、20年収めても、彼は一円の年金ももらえない。しかし、国は納付は国
民の義務であり、余裕ができたのなら、収めよと言う。そして収めなければ、
強制徴収するとさえ言う。

 私はこれを、「無年金者のジレンマ」と言っているのだが、この基本的な問
題すら、解決どころか、考えようともしていない。このジレンマに直面してい
る人は500万人もいるのだ。

 社会保障と税の大きな制約についても考えない。年金の基本についても考え
ない。
 
 せめて、医療費についてぐらい、考えて欲しい。請求書が電子化された今こ
そ、工夫さえすれば、無駄な医療費の本当の削減ができるのだから……。


■著者略歴■
飯塚正史(いいづか・まさし) 会計検査院官房審議官。明治大学客員教授
1975年早稲田大学卒。77年会計検査院入省。国交省、農水省、文科省、厚労省、
経産省、財務省、総務省、政府系金融機関の調査官、課長、審議官担当


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 「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp


猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■出演情報

・1月19日(木)20:00〜20:30東京MX9Ch「MXNEWS」に、生出演
 します。
 猪瀬は、16日(月)に福島を訪問し、面的除染の様子や相馬港などを視察し
 ました。また、福島県佐藤知事とも面談し、東京都が積極的に支援を進める
 意向を示しました。詳しくは放送をご覧ください。

■掲載情報

・1月16日発行「Lifework」第11号に、ロングインタビュー「我々は
 災後時代をどう生きたらよいか」が掲載されました。

・1月26日発売『一個人』3月号に、連載エッセイ「解決する力」の第6回が
 掲載されます。「きっかけはつぶやきから…ツイッターの威力を知る」。
 「地下鉄内でメールができるよう孫正義さんと協議する……都営地下鉄は一
 刻も早く工事ができるよう約束しましょう……」(本文より)。

・日経BPネットの好評連載「猪瀬直樹の『眼からウロコ』」最新号。
 「東京都、福島の教員50人採用など支援強化 『被災地応援ツアー』や中小
 企業商談会など支援策を固める」はこちら。
 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120116/296375/

・東浩紀氏が編集長の『思想地図β Vol.2』(税込2000円)に、村上隆氏・東
 浩紀氏との鼎談「断ち切られた時間の先へ―『家長』として考える」が掲載
 されました。1冊あたり635円が義援金として被災地に送られます。
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「東京都副知事で作家の言葉論。ツイッターで文章力を鍛えるには口語体では
なく文章語で書くことだと説く。読書は『10ページ読書』を勧める。それだけ
で頭の中に検索のキーワードができ上がると言う。また、小泉純一郎は<俳句
のように凝縮した1行の力強さがある>が、菅直人は<ページに言葉が埋まっ
ているだけ>といった分析等も興味深い」(読売新聞 8月14日付)

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     作家として、東京都副知事として進める「言語力再生」。
 サッカー界にも導入された「言語技術」やツイッターやフェイスブックなど
のソーシャル・ネットワークのほか、三島や太宰の文体にいたるまで、グロー
バル時代に不可欠なコミュニケーション力の目的・手段を独自の視点で解説。
 
  第一部 「言語技術とは何か」
  第二部 「霞が関文学、永田町文学を解体せよ」
  第三部 「未来型読書論」

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          □■『昭和16年夏の敗戦』 □■
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 1983年に世界文化社から刊行され、文春文庫になり、『猪瀬直樹著作集』に
入り、ロングセラーとして版を重ね昨年6月に中公文庫に収録された作品です。

 巻末には勝間和代さんとの特別対談「日米開戦に見る日本人の『決める力』」
が収録されました。

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  道路公団民営化をはじめ、作家として、東京都の副知事として、
      さまざまな世間の“壁”を突き破ってきた著者が、
     自らの体験を踏まえて綴る、人生を面白くする
          本気の仕事&生き方論。 

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        □■『地下鉄は誰のものか』ちくま新書 税込735円■□
 
  本書についての猪瀬ツイートを紹介します。

  「大江戸線建設で1兆円の投資をし、その結果、乗客も増えて2006年度以
  来、都営地下鉄は単年度黒字に転じている。したがって一元化は借金の返
  済のツケをメトロ側に回す画策ではないかという俗説には根拠がない」

  「通勤苦をよしとする既得権益者との戦いが必要であり、利用者自身もい
  まどんな不合理にさらされているか、よくしらなければいけないし、声を
  あげなければ改革は実現しないだろう」

  「『地下鉄は誰のものか』(ちくま新書)は、『ミカドの肖像』『土地の神
  話』以来の日本人のライフスタイルの歴史にもとづき地下鉄一元化の思想
  を説いています」

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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
  ◇◆「水道の海外進出」「地下鉄一元化」「空港」「すまい」◇◆
 ◆◇◆       東京はドーンと成長する。       ◆◇◆
            
         『東京の副知事になってみたら』   
                  (小学館101新書)              

  2007年6月、石原慎太郎・東京都知事からの「特命」は突然だった。
  東京が国との間に抱えるさまざまな問題を解決すべく、突破口となる
  役割を託された作家は、都庁の中で、何をみてどう感じ、どう動いて
  きたか。作家の想像力が行政に与えた影響とは?

  就任から4年、永田町・霞が関との戦いから都職員との触れ合い、東京発
  の政策提言に到るまで縦横無尽に綴る。

               *

  猪瀬直樹からのメッセージ。
  
「副知事になって初めて都庁の内幕を描きました。結局、東京が成長戦略を描
けばよいということがわかりました。東京水道の海外進出、メトロと都営地下
鉄の一元化、羽田空港のハブ化、東京湾の民営化、高齢者のケア付きすまい。
東京はこれからもドーンと成長する」
  
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