[MM日本国の研究772]「五輪で東京はパリを抜く」

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2013年11月07日発行 第0772号 特別
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■■■    日本国の研究           
■■■    不安との訣別/再生のカルテ
■■■                       編集長 猪瀬直樹
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「五輪で東京はパリを抜く」

五輪開催を勝ち取った東京。大型のインフラ投資への期待が否応にも高まる。
一方、猪瀬直樹知事は交通機関の稼働延長などを通じた「時間市場」の開拓に
重きを置く。

ハードより「伝統とモダン」の融合。都市の魅力でパリを抜くことを目標に
据える。

――東京五輪の招致成功を「チームニッポンの勝利だ」と指摘しました。

〇猪瀬〇 五輪の招致活動を通じて、日本の「中枢」を作りたいと考えました。
スポーツ団体や各省庁はそれぞれ情報を持っています。都庁もそう
です。だけど、情報は集積されないと意味はないですよね。「縦割り」を乗り
越えないといけない。首相官邸と密接に連絡を取り合いながら情報を集積し、
票読みができるようにしました。中枢機能を回復したのです。それで、「チー
ムニッポンの勝利だ」と言いました。

米国は「United States of America」ですが、日本は省庁の縦割り意識が根
強い「United Ministries of Japan」なんです。私は『昭和16年夏の敗戦』で
描きましたが、陸軍も海軍も石油の備蓄量を言わない。戦前は中枢の形成に失
敗したわけです。小泉純一郎政権では官邸になるべく集約していましたが、そ
の後の短命政権で縦割りに戻ってしまいました。

1月10日、PRのためにロンドンで会見をしましたが、その前日にコンサル
タントのニック・バレー氏と東京の魅力について深夜まで語り合いました。

私の著書、『ミカドの肖像』で引用したフランスの哲学者、ロラン・バルト
氏は東京について「いかにもこの都市は中心をもっている。だが、その中心は
空虚である」と書いています。空虚とは皇居を指しますが、緑に囲まれていま
す。欧州の諸都市も緑を(都市の)周囲に持っていますので、西洋に対する日
本の説明として秀逸なんですね。

そして、東京は郊外の農村地帯に向けて広がっていった。田園調布などです
ね。それを可能にしたのが鉄道網の充実です。電車が正確に発着するテクノロ
ジーも培っていったし、東京の郊外に吸収された人々は日本の近代化を支え、
モダンな東京を作り上げました。

まさに東京は伝統とモダンが重なり合った都市なのです。ここをニックと語
り合いました。「おもてなし」「ホスピタリティー」「テクノロジー」といっ
た概念がブエノスアイレスでの最終プレゼンテーションへとつながっていくわ
けです。

先ほど、日本はUnited Ministries of Japanと言いましたが、その中で東京
は「state」なんです。独自性を持つことができると同時に、取りまとめもや
れる部分がある。1つの成功モデルになればいいと思います。

□ 「時間市場」を開拓する

――五輪開催が決まった途端、成田空港と羽田空港をつなぐ鉄道など、大規模
な開発案件が叫ばれています。

〇猪瀬〇 民間の力をどう活用するかという思想がないとダメです。役人が税
金を使って何かをやるという発想では話になりません。

電力の安定供給を目的に作った官民連携インフラファンドで、東京は30億円
出しましたが、民間からは約300億円集まりました。千葉県袖ケ浦市で10万
キロワットの発電所が来年8月にできます。ほかの官民ファンドでは税金が9
割。民間の資金は1割です。

成田しか国際空港がなくて、羽田は国内空港なら鉄道で結ぶ発想も必要です。
けれど、羽田は国際空港になったし、横田基地も国際空港になれば必要ありま
せん。ニューヨークもジョン・F・ケネディ、ラガーディアとニューアークの
3空港で航空需要を賄っています。5本目の滑走路を羽田に造らなくたって横
田にあるんですから。

横田は石原慎太郎前知事の時にやって、小泉さんとブッシュ前米大統領の会
談の議題になったんですよ。その後の短命政権で「できっこないよね」となっ
てしまいました。安倍晋三政権が長期政権になると見られていますから、五輪
の招致を成功したところで改めて持ち出したのです。とりあえずメッセージだ
けは送ってあります。もう一度、政府と詰めていきます。根回ししていかない
といけませんね。

――知事はむやみな大型案件には否定的です。

〇猪瀬〇 「時間市場」を開拓するプロジェクトを始めました。空間は容積率
を変えるといった話ですが、時間はソフトです。安倍首相には標準
時間を2時間前倒ししましょうと提案しました。これくらいの発想がないと。

具体的には渋谷と六本木で終夜バスを走らせます。終電が満員でしょ。満員
ってことは市場があるっていうことです。ロンドンもパリもニューヨークも24
時間動かしています。

地下鉄は保線(線路の保守)という問題があります。ニューヨークの地下鉄
は4路線あるから保線ができるんですね。東京でも乗り換えを多少遅くして、
ギリギリまで運行時間を延ばすことはできますが完全24時間は無理です。しか
し、バスはできます。

民間は一部で既に深夜バスを運行しています。山手線の内側は都バスですか
ら、つないでいって民間がそこから客を運んでいく。そうすれば慌てて終電に
乗ることもなくなります。

タクシーの運転手が損するなんて声もありますが、その時はタクシーの利用
も増えるはずです。活性化して夜の客が増えますから。

あるいは朝の客も増える。今度、都庁の展望室を朝7時から始めます。そし
て、都美術館の営業を夜8時までやります。時間市場を開拓すれば、大きなポ
テンシャルがあり、消費活動に結びつきます。ライフスタイルが画一化してい
るから消費が固定化しているのであって、ライフスタイルをもっと変えていく
ことはできると思います。

そうすることで、文化も育っていくことになります。ブロードウェーは夜の
8時からです。ブロードウェーを見て、地下鉄に駆け込むことはニューヨーク
ではありません。

湾岸エリアには10の競技施設ができます。さらに豪華客船を横づけできるよ
うにします。そして、そこにカジノができれば、劇場や国際会議場などもでき
て、新しい消費の場がスポーツとともに広がっていきます。

(東京・丸の内の)三菱村はビジネス街ですが、例えば米国の保険が効くよ
うなシステムを作る。英語ができる救急救命士はもういます。インターナショ
ナルスクールも考えなければならない。五輪は、国際的な都市を作り上げるチ
ャンスだと思っています。

その力を、東京は心臓だから、全国に酸素を送り続けるわけです。よく東京
の一極集中だと言われますが、それは違いますよ。東京に集まった富を送り込
むことができます。

□ 速い東京がモデルを作る

United Ministries of Japanは意思決定が遅いが、東京は速い。東京が先に
進み、モデルを提供していきます。

世界都市ランキングで日本は4位です。今はロンドンが1位なんですね。こ
れまでニューヨークでしたが、五輪開催で抜いた。日本は万年4位ですが、(
3位の)パリは抜けるでしょう。まずはそこですよね。

ランキングの根拠を見ると文化と交通なんです。東京の交通は良いように見
えるでしょう。さらに分析すると国際航空事業が弱い。だから、先ほどのよう
な話になっていきます。文化も時間市場の開拓を通じて高められます。

変人が必要なんです。小泉さん、変人でしょ。小泉さんじゃないと道路公団
は民営化できなかった。石原さんも変人でしょ。じゃないと、最初の五輪の札
を出せない。リスクがあるから。僕もちょっと変人で、それで(様々なしがら
みを)突破していこうとする。変人はぶれないでしょ。

――2020年の五輪を都知事として迎えたいですか。

〇猪瀬〇 そこまではまだ考えていない。昨日まで招致をやってたんですから。
ただ、思想はきちっと展開したいですね。


(2013年10月14日号「日経ビジネス」)



「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp


猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■出演情報

・11月10日(日)18:00~18:55 日本テレビ『真相報道 バンキシャ!』に
生出演の予定です。

■掲載情報

・11月5日発行『潮』12月号に、AR三兄弟 川田十夢氏との対談「AR=拡
張現実」が書き換える未来地図」が掲載されました。

・11月5日発行『財界』に、「“時間”の市場を開拓することで需要を創り、
東京の潜在力掘り起こしを世界にアピールしていく」が掲載されました。

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