第345号【特別】(6月2日)「日本道路公団『消えた8億円』調査チームに問う」

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                  2005年06月02日発行 第0345号 特別
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 ■■■    日本国の研究           
 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
 ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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「日本道路公団『消えた8億円』調査チームに問う」

 前号で「道路公団にも広がる橋梁談合の闇」と題して5月24日の民営化委員
会の緊迫の議論を速報したが、委員会が2月から追及をつづけてきたもうひと
つの問題、公団の蓼科高原荘をめぐる「消えた8億円」疑惑にも動きあり(こ
れまでの問題提起は、当メールマガジン2005年3月31日配信・337号をご参
照ください)。
 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/mailshousai/2005/050331.html
 
 3月17日の民営化委員会の席上、近藤総裁は「重大な疑惑」として弁護士、
不動産鑑定士、一級建築士による「調査チーム」による検証を表明したが、2
カ月後の5月16日に発表された調査報告書は委員会の指摘に対して真摯に回答
する内容とはなっていない。結局、日本道路公団と関係が深い弁護士が加わっ
ているのだから、“お手盛り”調査になったと思われる。
 
 「当事者間の個別の事情」があるため、「当時の工事費にはある程度の幅が
生じる」から、適正な契約の範囲内にある、と結論づけているのだ。特定業者
と道路公団の「個別の事情」とは? 民営化委員会ではさらなる疑問を公団に
投げかけている。
 
 今回のメールマガジンでは蓼科高原荘に関する日本道路公団が委嘱した「調
査チーム」による「調査報告書」を全文掲載し、これに対する質問書を掲載す
る。

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                         平成17年5月16日
近藤剛総裁 殿
                              調査チーム
               調 査 報 告 書

 公団が保養所として「蓼科高原荘」、「安比グランドヴィラ?3」及び「南
紀田辺東急リゾートヴィラ・マリントピア天橋立」を取得する際に締結した交
換契約について、その契約金額・等価交換などに関する疑義が指摘された。

 この指摘に関し、公団総裁から専門・客観的立場での調査依頼があり、保養
所取得の判断は別として交換契約の金額及び内容について調査したので、その
結果を以下のとおり報告します。

【1】交換契約について

 本件交換契約は、公団が所有する利用計画のない不要となった道路残地、宿
舎跡地などの物件(以下「渡財産」という。)と相手方が所有する物件(以下
「受財産」という。)とを交換するもので、渡財産の価格と受財産の価格とに
差額が生じた場合には金銭で支払うこととなっている。

【2】調査方法

 交換契約締結時の詳細な資料は、公団の文書保存期間を満了しており存在し
ていないことから、次の方法により調査を行った。

1.「蓼科高原荘」の交換契約について

 蓼科高原荘の建設工事費については、交換相手方(註:東洋観光事業株式会
社、以下同じ)に新築工事請負契約書や契約図面、観光開発届書関係図書及び
取り付け道路工事に関する図面など一部資料の存在が確認できたことから、こ
れらを借用し調査の基礎とした。借用した資料を基に工事数量を算出するとと
もに交換当時の単価等の調査を行い、改めて積算内訳書を作成し工事費用の積
算を行った。

 土地については、対象土地と類似の公示価格または基準地の標準価格がある
場合は当時のその価格により、対象土地と類似の公示価格または基準地の標準
価格がない場合は当時の周辺における取引事例を収集した価格により、取引事
例比較法の考え方を準用して価格を求めた。また、その土地に建物が存在する
場合は、類似建物の当時の再調達単価に、期間の経過に伴う修正を施して価格
を求めた。

(中略)

【3】調査結果

1.「蓼科高原荘」の交換契約について

1)交換契約内容の概要(参考資料 省略)

《1》契約締結年月日
平成4年年3月19日
《2》渡財産
1,674,000,000 円(消費税抜き:1,672,095,000 円)
内訳 土地 1,608,595,000 円
   建物 65,405,000 円
(消費税抜き:63,500,000 円)
《3》受財産
2,218,000,000 円
内訳 土地及び温泉権 745,750,000 円
建物及びその付属物 1,472,250,000 円
《4》差額金
544,000,000 円(公団が相手方に対して金銭で支払)

2)交換価格の検証

《1》交換契約当時の社会情勢
 当時の社会経済情勢は、平成バブルのほぼ絶頂期で地価が高騰しており、建
設市況においても建設ラッシュにより、官・公・民の物件ともに予定価格と実
勢との格差が大きく、予算内に納めることが大変困難な状況であった。また、
材料の調達や作業員確保の困難性から、当時の刊行物に掲載していた賃金以上
のものを支払わないと作業も進まず、工期を守ることも困難な時期で、特に地
方は大都市に比べ、よりこの傾向が顕著であった。

 また、昭和62年5月に成立した総合保養地域整備法(いわゆる「リゾート
法」)の目的は、「ゆとりある国民生活」「地域振興」「内需振興」であり、
その法律に基づき都道府県が作成する基本構想の多くがバブル期に作成された
ことにより、一斉にリゾートブームとなった。バブル景気とリゾートブームが
相まって、観光需要も急激に増大し、特に内需拡大政策に伴う金余り現象から、
多くの資金がリゾート分野に流入した状況であった。

《2》交換価格の検証結果

■渡財産(別添の参考資料『蓼科高原荘建設工事費の検証』 参照)
 調査により求められた価格は、1,693,600,000 円(消費税抜き)程度であっ
た。

 交換価格の1,672,095,000 円(消費税抜き)との開差(+1.3%)は僅かで
あり、当時の交換価格は妥当であると認められる。

■受財産
(1)土地及び温泉権(参考資料 省略)
 調査により求められた土地の価格は、728,000,000 円程度であった。

 土地の交換価格720,000,000 円(745,750,000 円から温泉権の価格25,750,0
00 円を差し引いた価格)との開差(+1.1%)は僅かであり、当時の交換価
格は妥当であると認められる。

(2)建物及びその付属物(参考資料 省略)

 工事費について、建設省基準に基づく共通費(総合仮設費、現場経費、一般
管理費等)、類似物件の共通費(同)を考慮したもの、それぞれについて積算
を行った結果、次のとおりとなった。

《1》敷地内の造成工事費 124,805,100 円?116,070,700 円
《2》建物の建設工事費 1,206,614,100 円?1,094,539,800 円
《3》取り付け道路工事費 36,884,300 円? 32,218,400 円

 《1》?《3》の合計は、1,368,303,500 円?1,242,828,900 円となり、工
事事務費86,203,121 円?78,298,221 円及び営業用の什器・備品費 47,265,68
9 円を加えると合計1,501,772,310 円?1,368,392,810 円となった。

 交換価格の1,472,250,000 円は上記の範囲内にあり、当時の交換価格は妥当
であると認められる。

(中略)

4.総括
 上記のとおり、蓼科高原荘他2件の交換契約については、等価交換を基本と
する適正な契約内容であったと認められる。

(中略)

                                 以上

●調査チーム●
弁護士 高田敏明(高田法律事務所)
不動産鑑定士 緒方瑞穂((社)日本不動産鑑定協会)
不動産鑑定士 川添義弘((財)日本不動産研究所)
一級建築士 降井繁蔵((株)日建設計)

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「参考資料『蓼科高原荘建設工事費の検証』」(日建設計作成)

□検証目的

 本業務は、敷地内の造成工事見積書・造成申込図等図面に基く工事費の積算
ならびに建物等竣工図に基く工事費の積算を行い、蓼科高原荘建設工事費の妥
当性を検証することを目的とします。

□検証方法

 貸与された図面及び現地調査に基いて数量積算と単価設定を当社(日建設計、
以下同じ)独自に行い、新たに工事費内訳書を作成しました。作成した工事費
内訳書により、貸与された見積書及び契約内訳書との照査を行うとともに、目
視可能な範囲において関連図面と現地の照査を行いました。
 
□仮定条件

1)造成工事
・造成工事は単独工事(土木工事)として積算を行いました。
・単価及び諸経費は、当時の建設省土木工事積算基準や刊行物等を採用したも
のと、当時の当社の経験に照らしたものとの2つのケースを産出しました。

2)建物工事
・工事数量及び項目は建築数量積算基準(建築積算研究会)に準じて積算を行
いました。
・単価は、原則、当時の建設省建築工事積算基準及び刊行物を用い、補完的に
今回新たに徴集した専門業者見積を建設当時に設定し直したもの、同時期に建
設された当社設計の類似物件契約書によるものから採用しました。
・総合仮設工事費・現場経費・一般管理費は、建設省建築工事積算基準を採用
したものと、当時の当社設計の類似物件の実績によるものとの2つのケースに
ついて算出しました。

3)取り付け道路工事
・造成工事は単独工事(土木工事)として積算を行いました。
・単価及び諸経費は、当時の建設省土木工事積算基準や刊行物等を採用したも
のと、当時の当社の経験に照らしたものとの2つのケースを算出しました。
・数量は、蓼科高原研修センター(註:蓼科高原荘)造成工事竣工書類のうち
の取り付け道路出来形を取り付け道路工事に関する図面より確認し、使用しま
した。

4)本建物等の建設時期である平成3年当時は、建設ラッシュによるいわゆる
バブル絶頂期にあたり、官・公・民の物件ともに予定価格と実勢との格差が大
きく、予算内に納めることが大変困難な状況でした。また、材料の調達や作業
員確保の困難性から当時の刊行物に掲載していた賃金以上のものを支払わない
と作業も進まず、工期を守ることも困難な時期でした。特に地方は大都市圏に
比べ、よりこの傾向が顕著でした。

5)工事費は、発注及び請負の当事者間の個別の事情、また、請負者の得意分
野や受注意欲等により変動し、同一仕様の建物といえども全く同額の工事費に
はなりえません。取引工事費にはある程度の幅が生じると考えておく必要があ
ります。

□検証結果

 敷地内の造成工事費(設計申請料、消費税含む)、建設工事費(設計料、消
費税含む)及び取り付け道路の工事費(消費税含む)の、当社が独自に積算し
た工事費総合計は下記の通りとなりました。

●積算工事費内訳書
【ケース1:建設省基準に基く共通費による工事費】
造成工事費         124,805,100円
建物工事費       1,206,614,100円
取り付け道路工事費      36,884,300円
計           1,368,303,500円

【ケース2:●日建設計実績の類似物件の共通費を考慮した工事費】
造成工事費         116,070,700円
建物工事費       1,094,539,800円
取り付け道路工事費     322,184,000円
計           1,242,828,900円
                                 以上
                                 
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質問
                            2005年5月30日
                               猪瀬直樹

●蓼科高原荘の調査結果について

1、蓼科高原荘の建設工事費について調査報告書は、「交換契約相手方に新築
 工事請負書や契約図面、観光開発届書関係図書及び取り付け道路工事に関す
 る図面など一部資料の存在が確認できた」とされているが、そもそも道路公
 団は「東洋観光事業株式会社に確認したところ、蓼科高原荘の不動産鑑定評
 価書は保有していない」と回答していた。文書名が異なるとしても、建物の
 坪単価が261万円になる根拠となる資料を問い合わせていた委員の資料請
 求に対する回答としては、不誠実な対応と言わざるをえず、経緯の説明を求
 めたい。

2、調査報告書では建物の建設工事費は10億9453万円?12億661万円で、坪
 単価199万円?219万円と計算される。この点、

 《1》同時期(平成4年)に完成した同程度の設備の「ホテル木曽温泉」は
 建設費5億6650万円で坪単価は99万円(1894平方メートル)となっており、
 蓼科高原荘の坪単価は2倍以上となる。

 《2》「建物鑑定評価資料」(平成2年、建物鑑定評価実務研究会編、財団
 法人建設物価調査会刊行)によると、建物1平方メートルあたりの再調達原
 価は「ホテル(鉄筋コンクリート造7階建)…323,300円(1,066,890円/
 坪)」や「ゴルフクラブハウス(鉄筋コンクリート造2階建)… 338,200円
 (11,015,060円/坪)」など、同種建物で25万円/平方メートル?33万
 円/平方メートルとなっている。
 
 《3》1993年当時の建物の固定資産税の課税標準額は3億4188万円であり、
 時価の5?6割という一般的な割合から大きくかけ離れて、時価の3割にも
 満たないことになる。

  いずれと比較しても、蓼科高原荘の建物工事費は相場の2倍以上の価格と
 なっているが、このような高額の建物となったことについて調査報告書には
 具体的な分析・説明がなされておらず、「当事者間の個別の事情」「請負者
 の得意分野や受注意欲等により変動し、同一仕様の建物といえども全く同額
 の工事費にはなりえません」(調査報告書・参考資料『蓼科高原荘建設工事
 費の検証』)と記すのみである。

【質問1】JHと東洋観光事業(株)との間にどのような「個別の事情」があ
 ると判断されたのか、「個別の事情」がいかに相場の二倍以上の価格に反映
 されたと判断されたのか、疑惑に応えるための調査報告である以上、具体的
 に回答いただきたい。

【質問2】「請負者の得意分野や受注意欲等」とは当該契約においてはどのよ
 うな事情をさしているのか。また受注意欲や得意分野によって単価がこの契
 約でどのように変わり、どのように相場の二倍以上の価格に反映されたと判
 断されたのか、疑惑に応えるための調査報告である以上、具体的にご回答い
 ただきたい。

【質問3】調査報告にあたって作成された建物の建設工事費の明細書(調査・
 分析資料)をご提出いただきたい(調査者が一級建築士もしくは不動産鑑定
 士として署名・押印したもの)。

【質問4】建物の価格がなぜ14億円(坪単価261万円)になったのか。質問3
 の明細を踏まえ、あらためてご説明いただきたい。

【質問5】建物の建築工事費が10億9453万円?12億661万円となる計算の具体
 的なプロセスをお示しいただきたい。

3、蓼科高原荘の売却状況について現状をご説明いただきたい。

4、今年度、最低売却価格1億2000万円で蓼科高原荘の売却するにあたっての
 不動産鑑定評価書をご提出いただきたい。

5、敷地内の造成工事費が1億1607万円?1億2480万円とされていることにつ
 いて、

 【質問1】敷地造成工事の工事面積と工事の単価について、明らかにしてい
 ただきたい。

 【質問2】敷地の造成工事費は土地の費用であるにもかかわらず、建築費と
 して認められるのはなぜか。法的根拠(条文等)を示していただきたい。

 【質問3】蓼科高原荘は、敷地造成費も含めた14億円を基礎にして減価償却
 をしていると理解してよいか。その場合、減価償却の方法、土地造成費を減
 価償却の対象とできる根拠となる条文、税務通達などがあれば示していただ
 きたい。

 【質問4】当時の国土法では、土地価格の届け出を義務付けているが、土地
 造成費を含めて届け出ているという理解でよいか。

 【質問5】届出をしているのであれば、建物価格に含めて減価償却できるの
 はなぜか、根拠条文を示していただきたい。
                                 以上

━猪瀬直樹のスケジュール━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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